1. 背景・目的
「ブックライブ(BookLive!)」は、BookLive株式会社(東京都港区、代表取締役社長 淡野 正)が運営する、総合電子書籍ストアです。2011年にサービスを開始し、マンガ、書籍、小説、雑誌、ラノベなどを取り扱い、スマートフォン・タブレット・PCなど様々な端末で“いつでもどこでも読める”環境を提供しています。
このような電子書籍サービスにおいて、テレビCMを実施する目的としては、以下のような事項が挙げられます。
- 認知拡大:電子書籍ストアという選択肢が多様化する中で、「ブックライブ」というブランド名を消費者に印象付ける。
- ブランディング:サービスの「使いやすさ」「充実した品揃え」「マンガも書籍も楽しめる」という強みを映像で伝える。
- 利用喚起:無料マンガやキャンペーンを訴求することで、新規ユーザー登録や既存ユーザーの利用促進を図る。
- 他社との差別化:電子書籍ストア市場では競合が多いため、自らの“らしさ”をCM演出で明確にする。
特に、2022年にはこのCM展開が効果を上げており、国内でテレビCM好感度などを測る調査において、「消費者を動かしたCM展開」として表彰されています。
以上を踏まると、ブックライブのCMは「ただ映像を流す」だけでなく、サービスの価値をストレートに、また感情的に伝えるための意図あるコミュニケーション施策といえます。
2. クリエイティブの特徴・演出展開
CMシリーズには、複数の“篇”(バリエーション)があり、それぞれ演出・コンセプトが異なります。以下、主なものを見ていきます。
(1) 「全巻読破篇」
こちらの篇は、ユーザーがマンガを読み始めたら止まらず、気がつけば「全巻読破」していた…という“マンガあるある”をテーマにしています。女優の 橋本環奈 さんを起用し、家でマンガに没頭する様子をコミカルかつリアルな表情で描いています。 アドタイ
演出上のポイントとしては、以下のような点が挙げられます:
- 自宅のソファなど“くつろぎの読書タイム”を舞台にしていること。
- 読み進める中で変化する表情(驚き、笑い、達成感)を橋本さんが豊かに表現。
- “気づいたら時間が経っていた”“読み切ってしまった”というユーザー体験の共感演出。
- 音楽・ナレーション・カット割りが、テンポよく「読む → ハマる → 読み切る」流れを促す。
このような演出により、「ブックライブで読むとつい没頭してしまう」「気軽にマンガを楽しめる」という印象を視聴者に与えています。
(2) 「ダンス篇」
もうひとつ代表的なのが「ダンス篇」で、橋本環奈さんが“マンガ読むならブックライブ〜♪”というメロディに合わせて振付された「ブックライブダンス」を踊るという演出です。
演出の特徴:
- 明るくポップな雰囲気で、振付・衣装・セットが“軽快で楽しい”読書体験をイメージ。
- “指でBポーズ(ブックライブのBを作る)”など、視覚的にブランド名/サービス名を印象付ける動きが含まれている。
- 振付を真似したくなるような動きと、メロディの反復 (“マンガ読むならブックライブ~♪”) による“口ずさみ・記憶に残る”演出。
- Web・SNS連動で「踊ってみた」キャンペーン等を実施し、視聴者参加を促す設計も。
この篇によって、機能的・便利さだけでなく「楽しさ」「エンタメ感」「親しみやすさ」といった情緒領域にブランドを位置付けることができています。
(3) その他篇(使いやすさ・無料マンガ篇など)
公式発表によれば、2022年のCM展開では “無料マンガ篇/使いやすさ篇” など複数のバリエーションを通年で展開しています。
ここでは「10,000冊以上の無料マンガ」「スマホ・タブレットで簡単に」「場所を選ばず読める」など、機能・利便性を訴える演出が行われています。
例えば、スマホが浮遊するような演出を加えたり、時間・場所を限定せずマンガが読めるというシーンを切り取ることで、サービスの“いつでも・どこでも”という強みを視覚化しています。
3. 起用タレント・撮影エピソード
CMにおけるタレント起用・撮影背景についても、注目すべき点があります。
- 起用タレントは橋本環奈さん。彼女は“マンガ好き”としても知られ、ブックライブのユーザーでもあったという背景があります。
- 撮影スタジオのセットには、オレンジ色を基調とした“読書部屋”のような雰囲気が作られ、演出も細部までこだわっています。例えば「3 cm下手に」「1 cm高く」など細かな指示が出されたという裏話も。
- ダンス篇撮影中には、休憩中に橋本さんが「マンガ読むならブックライブ~♪」と口ずさんでいたという微笑ましいエピソードも紹介されています。
- また、CM撮影と同時に「特別インタビュームービー」「メイキング映像」もWebで公開され、ユーザーとの接点を増やす工夫がなされています。
こうしたタレント+撮影演出+Web展開の組み合わせにより、単なる“サービス紹介CM”を超え、視聴者の共感・記憶・参加を促すものになっています。
4. 効果と受賞実績
CMの効果測定・外部評価にも注目すべきデータがあります。
- 2022年12月13日、ブックライブのテレビCMが、CM総合研究所が発表する「BRAND OF THE YEAR 2022」において、 「消費者を動かしたCM展開」 を受賞しました。 booklive.co.jp
- 受賞理由として、「CM好感度調査において、当社としてエントリー以来過去最高のCM好感度を得た」「業績向上に大きく貢献したCMとして評価された」とあります。 booklive.co.jp
- つまり、CMを通じたブランド/サービス訴求が“ただ映像を見られるだけ”でなく、購買・利用行動に結び付いたと判断されているということです。
- さらに、撮影記事等で「マンガに没頭する」「共感できるマンガあるある表現」が話題となっており、視聴者の心に残る“リアルな読書体験”の演出が奏功しているようです。 アドタイ+1
このように、ブックライブのCMはブランド/サービス目的に対して、かなり高い成果を上げたといえるでしょう。
5. 今後の展開・予想
CMというメディアは変化が激しく、特にデジタル・SNSの影響が強まっています。ブックライブも今後、以下のような展開が考えられます。
- SNS・短尺動画連動:ダンス篇のように “踊ってみた” や “真似したくなる” 動きを取り入れたCMは、SNS拡散のポテンシャルが高いです。TikTok/Instagram Reels等を活用して、ユーザー投稿を促す展開が期待されます。
- Web限定コンテンツ強化:撮影メイキング、インタビュー、ユーザー体験動画など、CM放映+Web展開のクロスメディア戦略が今後も鍵になりそうです。
- 地域/ターゲット別クリエイティブの多様化:マンガ好き、ラノベ読者、ビジネス書読者などターゲットを細分化し、それぞれに響くストーリー型CMが増える可能性があります。
- データ活用による最適化:CM放映後の利用データ(登録数・利用率・離脱率)を活用して、どの演出がもっとも効果的かを分析し、次のCMに反映させるサイクルが進むと予想できます。
- 体験訴求の深化:「いつでもどこでも読める」「無料マンガも充実」という機能訴求から、さらに「読んだ後どうなるか」「読書を通じて得られる価値」へと訴求軸を進化させる可能性があります。
6. CMから読み取れるブランドメッセージ/サービス訴求
ブックライブのCMを通じて、以下のようなブランドメッセージ・サービス訴求が読み取れます。
- “マンガを読む楽しさ”を前面に出す:ダンス篇・全巻読破篇ともに、読書(特にマンガ)を「ただ読む」ではなく「楽しむ」「没頭する」「体験する」ものとして描いています。
- “気軽さ・アクセスの良さ”:無料マンガ/スマホで読める/場所を選ばないという説明的要素が、使いやすさやハードルの低さを強調しています。
- “ブランド名=サービス”の明確化:「マンガ読むならブックライブ~♪」というメロディや振付は、サービス名を覚えてもらうための工夫です。
- “親しみ・ポップさ”:タレントの橋本環奈さんを用い、明るい振付やセット演出により、堅苦しくないイメージを作っています。読書=知的で静的という印象だけでなく、楽しい娯楽として位置付けています。
- “ユーザー視点の共感表現”:マンガを読みたくて集中してしまう・気づけば時間が経っていたという「マンガあるある」を用いることで、ターゲットの共感を誘っています。
7. CM視点での“活用ポイント”/ユーザーとして知っておきたいこと
ブックライブのCMを目にしたユーザー視点で、知っておくと役立つポイントを整理します。
- CMで紹介されている“無料マンガ”・“キャンペーン”に注目:CMで「〇〇冊無料」などの訴求がある場合、Webアプリ内でエントリー手続きを見逃さないようにするとお得です。
- 「使いやすさ」の訴求=実際の体験と比較する:CMでは“どこでも読める”“簡単操作”と出ていますが、自分の端末・通信環境などで快適に読めるかを確認することが重要です。
- “記憶する”演出が多いCMなので、サービス名・URLを覚えておくと便利:例えば、テレビCMを見て「聞いたことあるサービスだ」と思ったら、Web検索で詳細をチェックしてみるのが効率的です。
- CMのターゲットを意識する:マンガ篇が多いので、マンガを中心とした読み物が目的のユーザーには親和性が高いですが、小説・ビジネス書中心の方は“品揃え・検索機能・価格”も別途チェックした方が良いでしょう。
- CM表現=実際サービスのすべてではないという理解:あくまで“テレビCMとしての”演出なので、細かい利用条件・料金体系・対応端末などは公式サイトで確認することが重要です。
8. 総まとめ
「ブックライブ」のテレビCMは、電子書籍ストア市場において「ブランド認知」「利用促進」「ユーザー共感」という目的を明確に捉え、クリエイティブ・タレント起用・演出・クロスメディア展開という複数の要素をうまく組み合わせています。特に「マンガを読む楽しさ」「いつでも・どこでも読める」「ブランド名を口ずさめるメロディ/振付」といった要素が、視聴者に印象付ける仕掛けとして機能しています。
また、評価面でも、CM総合研究所による表彰という形で「消費者を動かしたCM展開」として認められており、単なる広告宣伝以上の効果が出たものと判断できます。ユーザーとしても、CMをきっかけにサービスを知るという流れが一定程度できており、これからもブックライブはテレビ・Web広告を軸にしたプロモーションを続けていくと思われます。
今後は、さらにSNSや短尺動画・ユーザー参加型キャンペーン・ターゲット細分化クリエイティブなどが鍵になるでしょう。そして、CMを見るだけでなく「自分にとって使いやすいか/自分の読みたいジャンルがあるか」を併せてチェックすることで、サービス活用の満足度を高めることができます。

